サーベルタイガー・パーク 百万年ぶりの餌食(原題:ATTACK OF THE SABRETOOTH)

【時間】約91分
【監督】ジョージ・ミラー
【製作年】2004年
【ジャンル】「化石に存在するDNA」のように疑わしい映画
 
◆勝手な5段階評価◆
【B級度】4
【ネタ度】4
【ツッコミ度】4
【オススメ度】2
【理解不能度】2
 
 約半年ぶりの映画レビューです!
 アメリカのモンスターパニック映画。
 タイトルからすると、ジュラシック・パークの恐竜をサーベルタイガーに置き換えた映画のようだが……当然、ただのB級映画ですね。
 まあ、概要を簡単に言ってしまえば「サーベルタイガーを数匹復活させて、テーマパーク開いてみたら、タイガーさん達が逃げ出して何人か死んじゃった」という内容です。
 重要なのは「タイガーさん達が逃げ出した」というところと「何人か人が死んじゃった」というところです。テーマパークのプレオープンに人がたくさん来ている状態で、猛獣が脱走という阿鼻叫喚の展開が予想される中、死んじゃったのは十名に満たない。サーベルタイガーに遭遇したのも全部でせいぜい10名程度でしょう。
 まあ、言ってしまえば何ともちんけな内容。シナリオが良くできているわけでもなく、映像が素晴らしいわけでもない。しかし、それだけにB級映画として期待して見た人に対しては期待を裏切りません
 あ、そうそう、この映画にはB級映画特有の「インチキ科学」とかも出てきます。あまり詳しく書くと疲れるから全部は書かないけど、ちょっと考えると普通はあり得ないような設定も多数見受けられます。
 
 さて、そろそろ本編解説。ここから本格的にネタバレあり。
 
 ◆◆◆
 
 タイトルの通り、猛獣を扱った施設が最初から登場。
 そして、そこの警備員の男が登場し、最初にやり始めたことはエロ雑誌の鑑賞でした! 何とも意味不明の展開!
 何のためにそんな雑誌を読み始めた? と、思っていると、猛獣が生息する柵(電流が流れてるっぽいとこ以外は非常に貧弱)の中へと、雑誌の一ページが飛ばされていきます。
 すると、警備員の男、なんと二頭のサーベルタイガーがいる柵の扉を開けて、中に入っていくではないですか! しかも、扉開けっ放しで急いで取りに行きます! 彼にとってエロ本の一ページはそこまでするに値するのか!
 まあ、猛獣がいるとは言え、彼は銃で武装しているから安心なのかもしれません。中に入って90秒程度で死にましたけどね。
 
 さて、島の他のエリアでは、施設(プライマル・パークというらしい)運営の為に投資してくださった方々に向けたプレオープンのようなものが行われているようです。
 プレオープンにおけるオーナー最大の目標は……義理の兄に嫉妬させ、泣き顔をみることでした! これまた微妙な展開!
 一方、施設の警備担当の人達は、冒頭に登場した男により、柵の扉が開けっ放しになったことにはまだ気付いていません。警備を真面目にやろうとしている人はろくに居ないようです。
 
 そんな滅茶苦茶な島に唐突にやって来たアホっぽい大学生一行
 一応はオーナーの知り合いのようですが、彼らの目的は、よくわからないクラブの会員となるため、施設内で宝探しゲーム(端的に言うと、不法侵入して盗み)をすることのようです。
 あまりに支離滅裂かつ唐突な展開に苦情を言いたくなるところだが、まあ、B級映画のシナリオを成り立たせるためにはこんなご都合主義のような展開が必要なんでしょうね。
 
 その頃、警備員の一人が柵が開けっ放しであることに気が付きました。一応、このことを仲間に報告します。
 で、その後、柵の異常に気が付いた警備員がやったことは……柵を開けっ放しにして内部に侵入することでした! またかよ! しかも武器なし! 当然、中に入ってからは90秒程度の命でした。
 こんな状態が続いたら柵からサーベルタイガーが逃げ出し、プレオープンの客が襲われるのでは? と、心配してみるが、まあ、流石はB級映画。大勢が襲われるような大がかりで金がかかるシーンの撮影は行われませんでした……。
 
 大学生一行は宝探しのため、施設のお土産屋さんのような建物に進入しました。
 セキュリティにより、侵入がばれそうになった大学生。施設は280万ドルもの大金で作られたセキュリティによって守られているようです。すると、大学生は警備室に侵入し……パソコンをちょっといじっただけでセキュリティを解除しました! 施設のホテルの名前を入れたらセキュリティが消滅したそうです!
 するとビックリ! 何故かセキュリティが消滅したら、停電が発生し、サーベルタイガーが放し飼いにされている柵の扉が全て開いてしまいました! でも、停電が起こっている割に照明は中途半端につきっぱなし。作品を成立させる上で非常に都合の良い停電です。
 これでとうとうプレオープンにやって来た方々をサーベルタイガーが襲う地獄絵図となるのか!? ……と、思ったら、警備員が笛を鳴らしたら、タイガー御一行は檻に帰っ行ったそうです。何とも素晴らしく期待を裏切ってくれます。というか、笛鳴らしただけでサーベルタイガーから身を守れたんですか?
 
 さて、サーベルタイガーを捕まえて、これで終わり……とはならない。まあ、まだ映画は半分しか終わってないしね。
 停電後に檻に閉じ込めたはずなのに、何故か停電の影響でサーベルタイガーが逃げました。何ででしょうね? そして、今度は施設内で暴れ回ります。
 
 その頃、オーナーさんは義理の兄に対し、オーナーさん専用室のような場所でサーベルタイガーを復活させたことに関する自慢をはじめました。要するに、視聴者に対する、補足説明ですね。
 さてその内容は
 「近頃は科学の学位さえもっていれば誰でもクローンを作れる
 とか
 「化石化するとDNAは消滅すると思われているが、それは違う
 とか、意味不明な内容。
 アメリカンB級映画らしい科学の設定を出す辺りはあっぱれ! もっともらしい科学知識をひけらかさない辺りは期待を裏切らぬ内容です。
 
 さて、オーナーさんの義理の兄はと言えば、オーナーがいなくなったタイミングで金庫の中から企業秘密を盗み出しました。あっさり企業秘密を盗み出されるオーナーさんも間抜けですが、企業秘密を公表して嫌がらせしようとする義理の兄さんも幼稚です。そんなことしたらあんたもただじゃあ済まないでしょうが。
 そして、義兄さんが公表しようとしている内容の「特許」は、特許として認められた時点で既に内容は公表されているのではないかと思われます。
 ちなみに、企業秘密は金庫で守られているだけで、データを保存した媒体事態には一切のセキュリティが施されていませんでした……。
 
 一方の迷惑大学生は警備員の一人と協力して、ガス爆発でサーベルタイガーの一匹を仕留めました。
 さらに、警備員と大学生が歩き回っていると、新しい警備員と遭遇。その警備員が唐突に三頭目のサーベルタイガーの存在を明かします
 何でこの警備員以外にはオーナーが秘密にしていたんでしょうか? という疑問が一瞬頭に浮かびそうですが、新手のサーベルタイガーの「体重一トン」「下半身はゼリーみたいにぶよぶよで這って進む」「殺すのが大好き」というトンデモ設定が先の疑問を一蹴してくれます。オーナーさん、何でこんなの生かしておいたんですか!?
 そして恐るべきことに、このトンデモ設定をはじめて聞いた警備員と大学生は何も疑わずにすんなり受け入れました
 ちなみに、このトンデモタイガーさん。象のようにでかい怪物であることを期待していたのですが、残念なサイズのCGです。加えて言うと、下半身がゼリーみたいという設定なのに、脚の見た目は普通で、後ろ脚が動かないだけでした。
 
 サーベルタイガーと戦いを挑むことになった警備員と大学生一行は、施設内の照明を明るくする為、とりあえず警備室のセキュリティを元に戻し、電気を復旧させることになりました。ちなみに、ガス爆発でサーベルタイガーを倒した警備員は、何故かこの場からいなくなっていました。あまりに唐突に消失したため、一回の鑑賞では気付きませんでしたよ。
 大学生達がセキュリティを普及させていると、警備室の外からサーベルタイガーの声が聞こえます。警備員が廊下に出ると……這ってしか進めないサーベルタイガーが何故か施設内の梁の上を進み襲っていました! 這ってしか進めない上に、体重一トンの生物がどうやって梁の上を進んでいるのかは謎です。
 しかも、このトンデモタイガーさん。襲ったと思ったらいつの間にか梁の上に逃げ帰ってます。這ってしか進めないはずなのに、凄い移動力です。
 
 で、そのトンデモタイガーさんは、警備室の中に残った大学生を襲わずに、建物の出口付近に向かいます。
 すると、何故か登場するオーナーさん。トンデモタイガーさんから逃れ、出口の扉を閉めますが、タイガーさんが扉に体当たりを繰り返します。あ、ちなみにこの扉、ちょっと厚めのベニヤ板って感じです。とても体重一トンの生物の体当たりには耐えられそうにもありません
 しかし逃げないオーナーさん。扉が破られ、殺されてしまうのか? と、思ったら、建物の上にあった黄金のサーベルタイガーの象(なんとも微妙なCGでできている)の牙が体当たりの衝撃で外れ、オーナーさんがそれに刺されて死んでしまいました。あまりに間抜けな展開で理解に苦しまざるを得ない。
 ちなみに、トンデモタイガーさんはオーナーの死後、警備員に撃たれてあっさり死んでしまいました。
 
 そういえば、オーナーさんの義理の兄さんも、帰宅途中に何故かサーベルタイガーが放し飼いにされているエリアを通過し、殺されてしまいました。
 
 ◆◆◆
 
 この映画は行き当たりばったりすぎる。とりあえず、やってみたい展開を成立させるために無茶な設定を総動員したといった雰囲気があふれています。
 ハッキリ言って、B級映画としてネタで観たいという人以外は観ていてもイライラするだけかも知れませんので、鑑賞の際は注意する必要があります。
 でも、アメリカンB級映画としては「安っぽいCG」「インチキ科学」「意味の無いお色気シーン」「映画終了時にモンスターの生き残りが登場」「行き当たりばったりのご都合主義的展開」「死体又は死ぬ寸前の敵キャラを前にキスシーン」「作品の都合上、唐突に現れては消える登場人物」という定番の要素を複数兼ね備えた作品であり、一見の価値はあるかも知れません。いや、ないか。